KAZUO UKAWA
財務マネージャー鵜川 和男
非凡を平凡に務める
「ウォーキング中に、解体中の建物に出くわしたりすると、自然と鉄骨や鉄骨を探すようになりました。この会社に入るまでは、ただの廃棄物だったものが、今では金塊のように思えます」と話す元銀行員の鵜川さん。バブル経済の崩壊や金融ビッグバンをだれより間近に経験してきた。企業の財務担当というと一見平凡そうなイメージがありますが、鵜川さんの人生は統廃合を繰り返した日本の銀行のように波瀾万丈そのものでした。
朝日が昇るまで
中学から始めたバレーボールは30歳になるまで現役を務めた。25歳の時には全日本6人制クラブカップ男子選手権兵庫県予選大会で準優勝したこともあった。その当時を仕事面では、人が羨む銀行マンという職につき、気力体力とも最高潮だったと振り返る。
バレーボールは選手からコーチになり35歳ぐらいまで続けた。バレーボールから徐々に距離が空くようになったその隙間に銀行の仕事が埋まり、公私関係なく接待営業や出張の日々が始まった。そして気がついたときは成人病。現在は仕事に支障が出ないよう、日々の食事もカロリー計算し、適度な運動を心がけています。
ものづくり大国日本において、鉄スクラップは景気の先行指標である。
銀行マンから企業財務への転身
人生の転機は突然訪れた。銀行マン時代にお世話になっていた知人の紹介で三共スチールに勤めることに。「金融畑から企業経理の仕事への転身は、正直不安でした。前任者の鎌谷さんが懇切丁寧に仕事を教えてくださったことに感謝しています。」と鵜川さんは今でもその恩に報いるよう財務管理の勉強を続けている。「どんな市場も需給のバランスによって決められますが、鉄スクラップは生産型ではなく発生型の商品なので、供給弾力性が乏しく、短期的に乱降下します。また、相場商品のような投機目的で動くものではなく、実需によって取引されます。」鉄スクラップの需給バランスを短期で予測するのが難しいことがわかる
会社の成長を支える財務を目指して
鉄スクラップの需給バランスを予測するために、鉄鋼蓄積量という考えがある。これは、30年から40年という長期的な流れのなかで鉄スクラップの需給を推定するもの。ただし、鉄スクラップの価格は、鉄鉱石や石炭などの主要鉄鋼原料価格の動向に密で、発電エネルギーなどの技術進歩とも関係している。「10年、20年後の会社の姿を思い描かいながら、今ある資本をどのように使っていくのがベストなのかを常に考えるようにしています。その間にエネルギーやリサイクル関係の法律改正もあるでしょう。少しでも良い風に捉えて勝機をつかみたいと思います」。財務の仕事にこれまで経験してきた人生の起伏を重ねる合わす鵜川さん。
未来には可能性がある。しかし成功するとは限らない。
「10年、20年後というのは、確かに将来の話です。しかも、将来の話をしてさえいれば見通しが明るくなるというわけでもありません。今しておかなければ間に合わなくなることも沢山あるのです。今やっておかなければ後悔することもあります。」それは鵜川さん自身の私生活にも当てはまったそうです。「バレーボール時代仲間とバンド活動をする」と決めたのも何十年かして「やっておけば良かった」と後悔したくなかったからだ。「バンドを始めると、スタイルこそ違いますが、同じ思いの人が沢山いることを知りました。それではと、毎年ゴールデンウィーク中に加古川の日岡公園で『Music Fes In Kakogawa おやじバンド祭』を開催しています。」野外ステージに立つ赤いギター姿は今年で8回目となった。
鵜川さんの一日
鵜川さんは毎朝7時頃には出社します。出社してくるスタッフに仕事をスムーズに指示できるようにと、会社で定められている出勤時間の8時には仕事の段取りを終わらせておくそうです。「現場と内勤では仕事のリズムが違う」と鵜川さん。現場のスタッフにはなるべく時間的な余裕を持って物事を伝え、作業に集中してもらえるようにと気配りしています。